生成AIで変わるデータセンターの今後―ピクセルナイト#01開催レポート
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2025.11.01
2025年9月、ピクセルカンパニーズ株式会社は、データセンター・GPU・AI業界の専門家を招いたオンラインイベント「ピクセルナイト」の第1回を開催しました。

記念すべき第1回のゲストスピーカーには、スーパーマイクロ株式会社でジェネラルマネージャー FAE & ビジネスデベロップメントを務める佐野晶氏をお迎えし、「生成AIで変わるデータセンターの今後について」をテーマに、技術的な側面を中心としたディスカッションを行いました。本イベントには多数の方にご参加いただき、データセンター業界の最新動向と技術課題について理解を深める機会となりました。
生成AIがもたらすデータセンターの変革
トークセッションの冒頭では、佐野氏より生成AIの普及がデータセンター業界にもたらした根本的な変化について語られました。従来のCPUベースのデータセンターとは異なり、NVIDIAのGPUを使用する生成AIソリューションでは、消費電力が劇的に増加しています。
具体的には、従来のデータセンターで標準的だった1ラックあたり8〜12kWの電力消費が、生成AI導入により100kW、場合によっては300kW以上にまで膨れ上がっています。これは約10倍の電力増加であり、データセンター設計の常識を根本から覆すものです。
佐野氏より「オーブントースター約20個分の熱量を、冷蔵庫ほどのスペースで常に冷やし続けなければならない」という分かりやすい例えが示され、この課題の大きさが明らかになりました。電力増加に伴う発熱の冷却が、現在のデータセンターが直面する最大の課題となっています。
空冷の限界と水冷技術の必要性
従来の空冷システムは、ラック密度が20kWを超えると相対的な効率を失い、その時点で液冷がより効率的なオプションとなります。講演では、空冷と水の熱伝導率の差が約60倍もあることが指摘され、高密度化するデータセンターにおいて水冷システムが不可欠である理由が明らかにされました。

特に注目すべき点は、NVIDIAが推進する次世代のAI向けソリューション(GB200シリーズ、GB300シリーズなど)はすべて水冷式であり、空冷の選択肢が存在しないということです。これは、今後数年でデータセンターの水冷化が避けられない流れであることが強調して説明されました。
水冷ソリューションの種類と特徴
次にご紹介いただいたのは、水冷ソリューションの3つのタイプです。
1. ダイレクト・ツー・チップ(DLC)
ラック内を循環する冷媒がCPUやGPUなどの半導体から直接熱を取り除く方式です。ラック底部のCDU(熱交換器)から冷却液が循環し、さらに冷却塔を介して水道水と熱交換される二重ループ構造となっています。ピクセルカンパニーズのデータセンターでも、このDLCソリューションとリアドア熱交換機(インロークーリング)を組み合わせたソリューションを採用しています。
2. 液浸冷却
サーバー本体を冷却液に直接浸すことで冷却する方式です。熱交換の効率は非常に高いものの、保証やメンテナンスの課題があり、現在は実験段階にあります。
3. リアドア熱交換機
サーバー背面から排出された空気を水を使ったコイルで冷却し、冷やした空気をデータセンターに戻す方式です。

7〜8年前から導入されているこの技術は、初期の水漏れやホースの破損などの問題を克服し、現在では自社製造とインテグレーションにより、メンテナンス性や安全性が大幅に改善されているとのことでした。
既存データセンターの水冷化における課題
イベントでは、既存の空冷データセンターを水冷に対応させることの難しさについても議論されました。既存データセンターへの水道管の引き込みは、建築基準法や既存顧客への影響などの理由で非常にハードルが高いことが明らかになりました。
そこで紹介されたのが「サイドカーソリューション」です。これは、データセンター内に水道管を引き込めない場合でも、サーバーラックと冷却装置の間で冷媒を流すことが許可されていれば、冷却能力200kWの冷却装置をラックの横に置いてサーバーを冷却できる方法です。主に、空冷データセンターで試験的に水冷装置を導入したい場合に利用できます。

水冷化による電力効率の改善
水冷化の大きなメリットの一つは、データセンター全体の電力使用効率(PUE)の大幅な改善です。従来の空冷システムでは計算に必要な電力の半分以上を冷却に使っていた状況から、水冷化によってPUEが1.2以下、場合によっては1.1を切るような非常に効率の良いデータセンターが実現できることが示されました。
サーバー単体で見ると15〜20%の電力効率向上ですが、データセンター全体で見ると巨大なエアコンが不要になるため、大幅な省電力化が実現します。
ピクセルカンパニーズのコンテナ型データセンターの強み
イベント後半では、ピクセルカンパニーズのコンテナ型データセンターについても議論されました。当社代表の矢尾板裕介(当時)からは、当社グループのピクセルハイで推進中のデータセンターの構成についてもご紹介させていただきました。
ピクセルカンパニーズが提供するコンテナ型データセンターの最大のメリットは、従来のデータセンター建設に比べて短期間での構築が可能であることです。従来のデータセンターは設計から開業まで3〜5年かかるのに対し、コンテナ型ではこの期間を大幅に短縮できます。
また、弊社のコンテナは最新のB200 GPUを搭載しており、将来のB300のような新しいGPUにも対応できる拡張性のある設計となっています。この柔軟性の高い設計は、佐野氏をはじめスーパーマイクロ社のご協力により実現したものです
データセンター業界の将来展望
今後さらにAIが生活の一部になった時には、そのバックには膨大なコンピューティングが必要になります。電力使用の最適化と効率的な冷却技術の開発は、今後ますます重要になっていくでしょう。
イベントの締めくくりとして、10年後、20年後のデータセンター業界の展望について議論が交わされました。AIの進化によってデータセンターのあり方が大きく変わる可能性があり、具体的な未来は予測困難であるとしながらも、データセンターの運営のためだけに発電所を建設したり、洋上データセンターのように海上で冷却を行うといった革新的なアプローチが必要になるかもしれない、との示唆をいただきました。
スーパーマイクロのDCBSソリューション
講演では、スーパーマイクロが最近リリースした「DCBS(データセンタービルディングブロックソリューション)」についても紹介されました。このソリューションは、水冷式ラックや最新のGPU/CPUベースのソリューションと連携し、電源ユニットや冷却装置を含め、データセンターの構築を総合的にサポートするものです。

ピクセルカンパニーズのデータセンターでも、このラックソリューションを採用し、B200を搭載した完成品を工場から直接出荷する形で導入が進められています。管理システムであるスーパークラウドコンポーザーやCDUを含めた水冷装置が組み込まれた状態で納品されるため、スムーズな導入が可能となっています。
まとめと今後の展開
第1回ピクセルナイトは、生成AIがデータセンター業界にもたらす技術的課題と、それに対するソリューションについて深く理解する機会となりました。特に、水冷技術の必要性と実装方法、そしてコンテナ型データセンターの可能性について、専門家の知見を交えながら学ぶことができました。
ピクセルカンパニーズは、福島の地で最新技術を活用したデータセンター事業を展開しています。今回のイベントで議論された水冷技術やモジュラー型設計は、変化の激しいAI業界において、柔軟かつ効率的にサービスを提供するための重要な要素となっています。
ピクセルナイトは今後も定期的に開催予定です。本イベントにご参加いただいた皆様、そしてご登壇いただいたスーパーマイクロ株式会社の佐野晶様に、改めて御礼申し上げます。
(文責:ピクセルカンパニーズ広報チーム)
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