AIインフラのエキスパート、Nelson Wang氏がピクセルカンパニーズ上級顧問に就任 ── 生成AI時代のデータセンター事業のこれからを聞く

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 当社ピクセルカンパニーズは、IT業界で30年以上の経験を持つ元スーパーマイクロのバイスプレジデントであるNelson Wang(ネルソン・ワン)氏を2024年11月1日付で上級顧問に任命しました。Wang氏は、AI GPUサーバーアーキテクチャやAIクラウドインフラストラクチャー、水冷技術などにおいて高い専門性を持ち、業界で活躍してきました。昨今、生成AIが進化を続ける中、ピクセルカンパニーズがどのようにデータセンター事業を発展していけるか、またその中でWang氏はどのような展望を描いているのか。Wang氏へインタビューしました。

20年以上のサーバービジネス経験を活かし、日本のAI基盤構築へ

Wang:国立清華大学卒業後に、まず台湾で4〜5年、コンピュータ関連機器のセールスの仕事に就きました。その後1997年にアメリカのシリコンバレーに行く機会があり、そこではマザーボードの販売を行っていました。

2001年にSuper Micro Computer(以下、スーパーマイクロ)に入社した後は、2011年頃まで南米向けにサーバーやサーバーコンポーネント、サーバーシステムの販売を担当していました。2011年から2024年にかけては、アジア太平洋地域を担当しています。

Wang:およそ23年間、サーバービジネスに深く関わってきた経験があります。大きな顧客としてはIntelがおり、スーパーマイクロとパートナーシップを組んでいました。また、スーパーマイクロでは日本市場の開拓を使命としており、最近ではソフトバンクとの間で大きな取引も経験しました。

2023年〜2024年には、筑波大学、東京大学、JAXA、産総研など、HPCに関する研究プロジェクトにもかかわりました。具体的には、NVIDIA製品を導入するプロジェクトなどです。

Wang:2022年にスーパーマイクロがピクセルカンパニーズの子会社であるピクセルハイ合同会社と業務提携を行い、サーバーやストレージ、ワークステーション、ネットワーク機器、さらにグリッドやクラスター製品の設計、製造、販売に取り組むプロジェクトが始まりました。

このプロジェクトは、AIクラウドデータセンターを作るという非常に革新的な試みでした。特に印象的だったのは、コンテナ型の設計を採用している点と、水冷式を取り入れている点です。これらの設計は、日本でも世界でも恐らく前例のないもので、そのユニークさに非常に興味を惹かれました。

米中日で異なるAIデータセンターの課題と展望

Wang:まずアメリカについてですが、この分野で他国よりも2年ほど先行しており、研究開発でもリーダー的な存在です。ただし、AIクラウドは投資額が非常に大きいため、アプリケーションを早期に展開しないとコストがさらに膨らむという課題があります。いま生成AIがブームになっていますが、収益化はまだ難しい状況です。これはエンドアプリケーションが十分に整備されていないことが原因です。また、データセンターの電力使用量が非常に高いことから、スモールモジュールジェネレーターのような新しい発電方式が注目されています。

中国はアプリケーション面では非常に進んでいますが、アメリカとの緊張関係が原因で、GPUやAI、半導体へのアクセスが制限されるという問題があります。この状況は、AI技術の進展において大きな障害となっています。

Wang:日本では、大企業が独自にAIモデルを開発する動きがあまり見られず、現在のところ、データセンターにおけるAIマーケットは依然として未成熟の状態です。日本政府はAI活用の重要性を十分に認識しており、市場への投資や支援を行っていますが、ビジネス市場においてはまだ十分とはいえない状況です。

しかしながら、こうした現状でも日本のAI市場は非常に大きな成長のチャンスがあると考えています。アメリカや中国に比べて遅れがあるものの、2025年度には大きな成長を遂げる可能性が高いと見ています。

次世代型データセンターで電力効率とコストを両立

Wang:ピクセルカンパニーズでは、コンテナ型AIデータセンターと水冷技術を活用し、小規模なモジュール型データセンターを構築しています。このモジュール型の最大の特徴は、大規模な土地や建物を必要とせず、順次コンテナを設置することで初期投資を抑えながら、短期間でAIインフラを整備できる点にあります。

また、現在の日本のデータセンターでは、アメリカのように電力不足が大きな問題とはなっていませんが、新しい技術が登場することで、従来の設計では対応が難しくなると考えています。ここで鍵となるのが水冷技術です。

例えば、NVIDIAのH200のようにAI推論や高度なデータ解析を可能にするGPUでは、ラックあたり100kWから120kWが必要とされます。日本の従来型データセンターはラックあたり15kWから20kWの供給が可能であることを誇ってきましたが、これでも十分ではないほどの電力量です。一方で、ピクセルカンパニーズの水冷技術はNVIDIA H200にも対応しており、エネルギー使用率を15〜25%削減する効果が期待されています。

さらに、ピクセルカンパニーズの経営陣は非常にオープンマインドで、多様なビジネスモデルを柔軟に検討している姿勢が印象的です。同社は日本のデータセンター市場に関する深い知見を持っており、今後の発展が期待されます。また、私自身も海外の市場から新たなビジネス機会を持ち込むことで、同社のさらなる可能性を広げられると考えています。

グローバル展開と技術革新で日本独自のAI基盤づくりを支援

Wang:グローバルな大企業がAIを活用しようとする場合、そのアプリケーションを支えるAIインフラを各国に配置する必要があります。これはアメリカや中国、私がいるシンガポールを含む他の国々でも同じです。その中で、日本はこうしたグローバルなAIインフラ構築において欠かせない存在だと考えています。そのようなグローバル展開に私のこれまでのノウハウや経験が貢献できると考えています。

Wang:私はアメリカでのビジネス経験を活かして、最先端の情報提供や具体的なガイダンスをお届けしたいと考えています。また、海外とのコネクションを活用してビジネス機会を創出し、新たなパートナーシップの形成にも貢献できると考えています。

さらに、私が関わっているもう1つの企業であるHi-P Internationalでは、AIソリューション、AIロボット、AI医療機器などを手がけています。ピクセルカンパニーズとHi-P Internationalの間で新たなパートナーシップを築くお手伝いもできると期待しています。

Wang:ピクセルカンパニーズは、日本企業が開発する独自AIプロジェクトに大きく貢献できると考えています。いわゆる「ソブリンAI」という概念の実現です。この言葉はあまり馴染みがないかもしれませんが、自国のデータ、リソース、技術力を活用して、他国に依存しない形でAIを開発・管理していく取り組みです。日本では、特に日本語という言語や日本の歴史を活用しながら進められるでしょう。

また、ピクセルカンパニーズのコンテナ型AIデータセンターや水冷技術はまだ進化していきます。技術の発展によってさまざまな市場を獲得し、AIデータセンターのソリューションをより成長させたいと考えています。さらにコスト効率が高く、使いやすいソリューションを顧客に提供できることを目指しています。

Nelson Wang(ネルソン・ワン)

 1969年台湾生まれ。2001年にスーパーマイクロへ入社以降、Sr. Director of Sales、Enterprise Solutionsゼネラルマネジャー、VP of Business Developmentなどさまざまポジションを歴任。セールスエンジニアリング、マネジメント、事業開発、技術アライアンスの分野で多くの成功実績を持つ。製品の設計から製造、活用モデルに至る確かなエンジニアリング知識と優れたセールススキルを兼ね備えた専門家として高い評価を得ている。近年はAIインフラストラクチャーとデータセンターの技術革新に深く携わり、先端技術分野において卓越した知見を有する。

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